院長 孫 栄金

中国:漢方医;日本:薬学博士、鍼灸師

皆様のお陰様で、孫栄金鍼灸院は平成10年2月仙台にて開院して以来、鍼及びお灸の治療一本筋で参りまして、25年目を迎えました。院長のわたくしは中国出身ですが、日本籍に帰化しています。故郷杭州の大学と上海の大学院で東洋医学、現代医学及び鍼灸を学び、その後故郷に戻り、省内随一の東洋医学及び鍼灸の臨床・研究センターである浙江省中医薬研究所に医療及び研究職に就きました。平成元年に、日中医学協会笹川(良一)医学奨学金中国医学研修生として来日し、東北大学薬学研究科にてガンの免疫研究を従事したのち、同科で博士号を取得しました。その後は自身の中国でのバックグラウンドを生かしたく、厚生大臣の鍼灸師免許を取得した上、鍼灸院を開きました。来日以来のわたくしに優しくして下さった日本の方々に恩返しと同時に、自分の暮らしの基盤としました。

皆様ご存じのように、鍼灸の長い歴史及びそのルーツが中国にある等についてはここでは敢えて述べませんが、現代医学が高度な発展を遂げた今、鍼灸という伝統的な治療法はなぜ、いまだに数多くの患者さんに支持されるのでしょうか。

現代医学には、素晴しい治療手段が沢山あります。高度な検査技術、救命救急、外科手術は言うまでもなく、感染症には最新鋭の抗生剤、自己免疫疾患にはステロイドホルモン、不妊症には体外受精など、まさに現代医学なくしては、我々が今享受している健康な生活は保てないと言っても過言ではないでしょう。しかしながら歴史の前進と共に、我々は、現代医学の成果が、同時に多大な副作用をもたらしたことも認識させられました。ペニシリンはアナフィラキシーショックをおこし、時には命を奪う。有機リンの特効薬であるアトロピンはその自身が毒薬である。ステロイド剤は服用者の副腎を蝕み、輸血には肝炎・エイズなどの感染リスクを伴う、等々。これらのことは、我々の東洋医学(漢方・鍼灸など)への再評価の機運を作ってくれたと言えるかもしれません。

鍼治療は、医療用鍼を一過性に体内刺入以外は、一切の物質も体内に入ることがないので、毒性はなく、副作用も限りなくゼロに近い。その鍼の材質は一般的にはステンレスですが、金や銀を使う場合もあります。厳密に滅菌した上で繰り返す使うことも、法律的に又は学術的にできなくもないが、弊院の場合はすべてディスポーザブル(一回のみ使用)鍼を使用しています。お灸の場合、不慮の過失による火傷以外は、毒性も副作用もないに等しいと私は見ています。

ここで、疑問が出て来るかもしれません。毒性も副作用も殆んどない鍼灸は、果たして効き目はあるのかと。私は、自分の長い鍼灸臨床の経験から、万能ではないが、幅広い疾病に対し、鍼灸は効き目があると断言できます。神経痛や関節痛、筋肉痛は勿論、うつ病や更年期障害、冷え症、不眠症、不妊症、耳鳴り・難聴などに対しても、大変有効であると言えます。現代医学よりも効果があげられる場合もしばしばあるのです。

治療面に限らず、東洋医学の原始的とも言える診断方法が、大変役に立つのです。顔色から肝臓・胆嚢疾病の発見に繋がった例もあれば、脈診から妊娠の仮診断や循環器異常の発見例など、疾病の早期発見にもつながっています。

鍼灸治療は化学薬品のような即効性は必ずしもありません。私には「頑固な痛みを一発で治す」と言った必殺技はありませんが、うまくいけた場合、病院を転々とした後でも、なかなか軽減されなかったひどい坐骨神経痛が短期間で治った事例があります。産婦人科のお医者さんから紹介され、当院で鍼灸を受け、めでたく妊娠した不妊症の方も数多くいます。また、「鍼灸で癌を治す」と豪言することはできませんが、手術・化学及び放射線治療をそのまま受けながら補助的な治療として、癌の患者さんに鍼灸治療を施し、体質の改善や免疫力の増強及び余命の延長など実績が挙げています。

私は無理な治療は勧めません。仮に帯状疱疹の患者さんがいらした場合、私はまず、疱疹そのものに対して、病院への受診を薦めます。なぜなら、ヘルペスというウィルスに対しては、最新鋭の抗ウィルス剤の方が患者さんにとってベストだと考えているから。しかし、もし疱疹による神経痛との後遺症が残った場合は、痛み止めを飲むより、当院での鍼灸治療を勧めたいのです。私はダイエットの治療もしていますが、ダイエットをしたくて来られた、どう見ても太ってない方に対しては、ダイエットの必要はないと力説しています。

まれに、「鍼灸を即座にやめなさい」と患者さんを叱るお医者さんがいます。が、同時に、私のところへ鍼灸治療を受けに来られる各科のお医者さんや薬剤師、看護師の皆さんもいます。鍼灸治療は一部の患者さんに、薬物や手術治療の以外に、選択肢を提供しているのです。

父(故人)も東洋医学の治療家で、わたくしは二代目です。日本人の妻と、自立した娘2人がいます。

 還暦を過ぎましたが、健康である限り、自身の知識及び臨床経験をフル活用し、一生懸命治療に取り組みますので、どうぞ、今後ともよろしくお願い申し上げます。